TSMC(台湾積体電路製造)【TSM】 沿革 NYSE

Taiwan Semiconductor Manufacturing Company (TSMC)は台湾に本社を置く世界的な半導体メーカー。1987年に台湾政府とフィリップエレクトロニクスのジョイントベンチャーとして設立。1994年台湾で上場、1996年に台湾企業として初めてニューヨーク証券取引所に上場。現在はコンピューター、自動車、産業機器メーカー等に対して、半導体の開発、設計を行っている。

TSMC(台湾積体電路製造)【TSM】 沿革 NYSE

Taiwan Semiconductor Manufacturing Company (TSMC)は台湾に本社を置く世界的な半導体メーカー。1987年に台湾政府とフィリップエレクトロニクスのジョイントベンチャーとして設立。1994年台湾で上場、1996年に台湾企業として初めてニューヨーク証券取引所に上場。現在はコンピューター、自動車、産業機器メーカー等に対して、半導体の開発、設計を行っている。

半導体ファウンドリ「TSMC(台湾積体電路製造)」といえば、今世紀において最重要企業の一つと言っても過言ではないだろう。

時価総額は実に6,680億ドル。NVIDIA(7,530億ドル)はともかく、あのインテル(2,160億ドル)が三つあっても足りないほど、市場から高く評価されている企業だ。

業績の良さは折り紙付きで、2020年の売上高は477億ドル。なおかつ営業利益は202億ドルと、極めて収益性が高い。同年における営業利益率は42%にのぼった。

今回の記事では、半導体産業の要衝となった「TSMC」について徹底して理解できる内容を目指す。その経緯と事業モデル、市場環境などを知ることで、テクノロジー産業全般への理解度がより一段と深まるはずだ。

TSMC創業者、モリス・チャン(張忠謀)

TSMC創業者のモリス・チャンこと張忠謀(敬称略)は1931年生まれ。あのウォーレン・バフェットよりも一歳ほど年下だ。中国の寧波市に生まれ、ハーバード大学に進学した。

その後はMITに転入し、1952年に卒業。間もなく機械工学の修士号も取得している。米国の半導体企業「テキサスインストゥルメンツ(TI)」に入社したあと、スタンフォード大で博士号も取得したエリートだ。

当初のキャリアでは25年間をTIで過ごした。時間をかけて頭角を表すと、シニアヴァイスプレジデント(SVP)としてグローバルでの半導体事業を統括するまでに昇進する。

1984年には同社を去り、ゼネラルインストゥルメンツ社長に就任。しかしその一年後、チャンは引き抜かれる。引き抜いたのは台湾だ。こうしてチャンは、台湾の工業技術研究院(Industrial Technology Research Institute)トップとなった。

当時の台湾は、半導体産業をイチから立ち上げようという段階。その中でチャンが悟ったのは、「電子機器メーカーは、コストカットのために製造能力をアウトソーシングすることを迫られる」ということだった。

こうして1987年、TSMCが設立される。モリス・チャンは董事長(Chairman)として会社を率いた。世界で初めて、集積回路(IC)に特化したファウンドリ事業者だった。

TSMCは、中国政府とフィリップス・エレクトロニクス(オランダの家電大手)のジョイントベンチャーでもあった。

1994年の年次報告書では「TSMCは他の半導体メーカーにとって競争相手ではなく、パートナーである」と自らを説明。当時すでに130を超えるアクティブ顧客がおり、ICファウンドリ市場の23%近くを占めていた。

従業員は2,681名ほどいたが、そのうち50%は高等教育(a college or advanced degree)を終えていた。それでいて平均年齢は28歳という、極めて若い組織でもあった。

高度化する半導体産業での圧倒的な地位

TSMCが半導体ファウンドリでトップ企業に躍進したのには先行者優位(First mover advantage)が大きかった。半導体産業が成長し、競争が激化するほど、設備投資や先端技術を使えることが必須の条件となる。

創業者モリス・チャンは「バーチャル・ウェハー工場」という概念をいち早く提唱した。ファウンドリ事業者は顧客に一気通貫型のサービスを提供し、ファブレス事業者(顧客)はまるで「自社の工場」のように、製造過程や進捗をチェックできるようにしたのだ。

半導体ビジネスには巨額の設備投資が必須だ。そこでTSMCは顧客と戦略的提携を結ぶのに加えて、設備投資に必要な金額を顧客にも「協力」してもらうというスキームを活用。こうして先進設備を整えること自体が、ファウンドリ事業に参入する際の深い「堀(moat)」となる。

半導体ファウンドリ事業では、如何に「微細」なチップを作れるかが競争上の重要なポイントとなる。集積回路(IC)の「集積度」が上がるほど、ICチップとしての性能も上がるのだ。現代では「数ナノメートル」単位まで微細化が進み、TSMCはその点でトップを走っている。

以前の記事でご紹介したように、半導体産業は高度化が進み、設計から製造まであらゆる局面で水平分業化が進む。製造設備を用意することに巨額の投資が必要なのは前述した通りで、製造プロセス自体にも数ヵ月という時間がかかる。

2020年の年次報告書によると、今日のTSMCは510社にのぼる顧客を有し、281の異なる技術を駆使して11,617もの異なる製品を作っている。

周期的に訪れる「半導体サイクル」

ここまでが、TSMC(台湾積体電路製造)の概要だ。後半では、同社のコスト構造や市場環境、成長戦略などについて確認する。

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・TSMCの収益性が高い理由と、積極的な株主還元
・TSMCを取り巻く五つの需要
・半導体ファウンドリ市場全体の概況

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