オークション、勝者の呪い
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2020年のノーベル経済学賞の内容は「オークション理論」である。
価格が上がっていくのは「イギリス式」で、美術品など希少価値の高い品物を取引する際によく使われる。オランダ式の「ダッチオークション」では、反対に価格を下げていく。
今回受賞したオークション理論で一つのポイントとなったのが「勝者の呪い」である。オークションの最中に人は熱中するが、いざ競り落とすと「高い金額で買ってしまった」と自責の念に囚われる。
今の時代、オークションモデルはどこにでも隠れている。インターネット広告、不動産の売買、米国債入札など。
ミルグロム氏は、2004年に行われたGoogleのIPOでも、オークションモデルの採用について助言した。
価値が明確なものほど危険
「勝者の呪い」が存在することは以前から知られていたが、彼らの研究が評価された点の一つは「それが起こる条件」を明確に示したことにある。
一番危険なのは、明確な価値がある資産に対するオークションだという。
例えば、ダイヤモンドのオークションを行う場合。ダイヤモンドの価値は、それを転売したときにいくらで売れるかで必然的に決まってくる。
しかし、その場で買う人の力量により算定には差が生じる。 5人のオークション参加者がいて、3人は正当な算定ができたとしよう。残り2人がそれぞれ誤った算定をするが、1人は安く見誤り、もう1人は高く見誤るとする。
この時、競り落とすのは「高く見誤った」1人である。こうして「勝者の呪い」が現実のものとなる。競り落とす人物が最も合理的である可能性は低い。
オークションの歴史と今回の受賞内容については、いくつも興味深いポイントがあり、実用性も高い。今年の年末特集あたりで改めて掘り下げてみたいう。