核融合発電銘柄:夢のエネルギー実現へ!日本企業の技術力を探る

東邦金属

カーボンニュートラル達成に向けた切り札として、世界中で核融合発電への期待が高まっています。

燃料となる重水素やリチウムは海水中に豊富に存在し、発電時にCO2を排出しない究極のクリーンエネルギーとされるこの技術は、長らく夢物語とされてきました。
しかし近年、国際協力によるITER(国際熱核融合実験炉)計画の進展や、各国政府による支援強化、スタートアップ企業への民間投資活発化など、実用化に向けた動きが加速しています。

本記事では、この未来のエネルギー市場で重要な役割を担う可能性を秘めた国内企業を紹介し、その技術力と核融合発電への貢献を探ります。

独自の光技術で核融合の課題に挑む「浜松ホトニクス」

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浜松ホトニクス株式会社は、1953年に設立され、光技術を応用した多様な製品・サービスを提供しています。
長年にわたり培ってきた光技術の知見を活かし、近年では、次世代エネルギーの一つとして研究が進む核融合発電分野へも積極的に取り組んでいます。

1970年代からレーザーフュージョンに関する研究開発に関わりを持ち、1990年代に高出力半導体レーザの開発成功を機に、発電実現に向けた取り組みを本格化させました。
特に、核融合炉に用いられる高出力レーザー技術、高密度プラズマの精密な制御・計測技術、高品質な燃料ターゲット開発など、反応制御に関連する要素技術を総合的に自社開発している点が特徴です。

浜松ホトニクスは、独自開発のYb:YAGセラミクスを用いたDPSSLや伝導冷却方式等の革新技術を追求しています。
加えて、発電炉用レーザー技術として高出力化を目指す増幅器開発や、ビームパターン改善による光学素子ダメージリスク低減も推進。
高密度プラズマ制御では高精度ターゲット製造・供給、レーザー照射によるプラズマ生成・制御を、計測技術ではレーザーフュージョンの超高速現象を捉える検出器(ストリークカメラ等)開発に取り組んでいます。

浜松ホトニクスの先進光技術は、将来の核融合発電市場において、レーザー装置等の供給を通じて重要な役割を担う可能性があります。
しかし、同技術は未だ研究開発の途上にあり、実用化には長期的視点と継続投資が不可欠です。
他方式の核融合技術や新レーザー技術の台頭など競争環境の変化もリスク要因と言えるでしょう。

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超精密光学でレーザー核融合に貢献「ジェイテックコーポレーション」

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株式会社ジェイテックコーポレーションは1993年に設立され、X線ミラー等を扱うオプティカル事業、ライフサイエンス・機器開発事業、その他事業の3つの事業セグメントを展開しています。
オプティカル事業では大型放射光施設「SPring-8」等へ納入する超精密加工技術が、国内外の先端科学で高く評価されています。

近年、同社はレーザー核融合分野への関与を本格化。
株式会社EX-Fusionとの技術提携を強化し、レーザー核融合におけるレーザー精密制御に不可欠な、次世代の「高性能反射鏡」開発に向けた取組みを開始し、同分野での貢献を目指しています。

同社の核はEEM(Elastic Emission Machining)等の原子レベル超精密加工技術です。
この高度技術によるX線集光ミラーは、放射光施設でナノ集光を実現する超高精度光学素子。
レーザー核融合でも燃料への精密なレーザー照射に不可欠なこれら最先端光学部品が、EX-Fusionとの提携を通じ実用化に貢献すると期待されます。

レーザー核融合技術の実用化が進めば、同社の超精密光学部品の需要が高まる可能性があり、新たな事業領域での貢献が期待されます。
しかし核融合発電の実現は長期の研究開発と巨額投資を要する挑戦です。
提携を含む開発全体の進捗は、技術の陳腐化、国内外の政策変更、部材調達の困難といった様々な不確実性の影響を受ける可能性があります。

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高温超電導線材が牽引する核融合戦略「古河電気工業」

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古河電気工業は1884年創業の歴史ある企業です。
インフラ、電装エレクトロニクス、機能製品、サービス・開発等の4事業を展開し、「メタル、ポリマー、フォトニクス、高周波」のコア技術を基盤に社会課題解決型事業を創出しています。

同社は、クリーンエネルギー分野において、核融合発電関連製品の開発を通じて、安全で持続可能なエネルギー供給への貢献を目指しています。
特に、英国のトカマクエナジー社の先進核融合原型炉「ST80-HTS」向けには、高温超電導(HTS)線材を供給しており、核融合発電の実用化に向けた重要な技術貢献を行っている点が注目されます。

核融合発電の実現は、長期的な研究開発と大規模な投資を必要とする挑戦的な分野です。
同社は、外部パートナーとの共創やオープンイノベーションを積極的に進めることなどで、新事業創出に向けた基盤整備を図っています。
このアプローチは、技術の陳腐化や予期せぬ市場環境の変化といったリスクに対応し、持続的な成長を目指す同社の戦略を明確に示していると言えるでしょう。

核融合発電の実用化に伴い、HTS線材などの需要増加が見込まれます。
古河電気工業は、HTS線材の開発製造でリーディングポジションにあり、高い技術力を活かして関連製品の開発を進めていることから、この分野での貢献拡大が期待されます。
しかし、核融合発電の動向は、技術進捗、政策変更、部材調達の課題といった不確実性の影響を受ける可能性があるため、注意が必要です。

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世界初の安定した超電導接続技術を開発「住友電気工業」

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1世紀以上の歴史を持つ住友電気工業は、電線・ケーブル製造から発展し、環境エネルギー、産業素材など5分野で事業展開する総合メーカーです。
核融合市場向けに超硬耐熱機能を有するタングステンモノブロックを供給しているほか、小型核融合炉用マグネットや超電導モータへの応用も望まれており、この分野において、同社の技術が貢献できる可能性があると考えられます。

環境エネルギー分野では、大型連系線向け超高圧直流ケーブルなど、超高圧・大容量送電技術の開発を進めています。
特に、永久電流モード高温超電導コイルの実現で世界初の成功に貢献した超電導接合技術は、銅線材の200倍以上の電流を流せる高温超電導線材と合わせ、核融合分野での応用可能性も研究・検討されています。
電力制御機器や日新電機とのシナジーによる受変電システムも強みです。

「住友電工グループ2030ビジョン」では「グリーンな地球と安心・快適な暮らし」の実現を掲げ、脱炭素社会への貢献を重視。
このビジョンに沿い、送電網高度化や再生可能エネルギー安定供給の研究開発を推進。

しかし、核融合発電の実用化には多くの技術的課題があり、時期や市場規模は不透明です。
原材料価格変動、地政学的リスクも事業リスク要因となり得ます。
この未来市場で技術的リーダーシップを維持・発展させるには、的確・迅速・柔軟な変化への対応、独自性があり収益力に優れた新製品創出に向けた研究開発、リスク管理体制の強化などが不可欠となるでしょう。

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レアアース系高温超電導線材の量産技術開発を推進「フジクラ」

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1910年創業のフジクラは、祖業である電線・ケーブル製造で培った高度な技術力を基盤とし、情報通信やエレクトロニクス分野など多岐にわたる事業を展開しています。
近年では社会全体の持続可能性への貢献を重視し、次世代エネルギーとして期待される核融合発電分野への挑戦を開始しています。

フジクラは成長戦略「Beyond2025」で核融合発電を重要視し、特に核融合炉マグネットの性能を左右する「レアアース系高温超電導線材」の開発・製造に注力し、量産技術を確立しています。
この線材は、核融合炉に求められる超高磁場中で高い電流特性と高強度を実現する量産技術が確立されています。
フジクラは米国CFS社へこの線材の納入を開始しています。

このレアアース系高温超電導技術の進展は、核融合発電に必要な超電導電磁石の小型化に貢献し、核融合発電自体がエネルギー・環境問題を根本的に解決する革新的技術として期待されています。
フジクラがこの分野でトップレベルの研究開発を継続することは、将来の核融合市場において重要な部品供給の担い手として貢献する可能性を示唆します。

一方で、市場形成の遅れや競合技術の登場といった外部環境の変化は同社にとって事業リスクとなり得ます。
さらにフジクラ自身では、高性能な超電導線材の増産投資に加え、コストダウンの施策を進め、サプライチェーンの構築を推進することが、将来のエネルギー事業を本格化させる上での重要な要素となり得ます。

>>フジクラについてもっと詳しく今年最も騰がった銘柄「フジクラ」高度情報化社会でさらなる成長なるか?

国際ITERプロジェクトに主要機器を供給「三菱重工業」

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三菱重工業は、エネルギーシステムからプラント、航空宇宙に至るまで、多岐にわたる分野で社会基盤を支える世界有数の総合重工業メーカーです。
同社は、CO2を排出しない究極のエネルギー源として期待される核融合エネルギーの実用化に向け、国際協力プロジェクト「ITER」へ主要メンバーとして参画。

三菱重工業はITER計画において、核融合反応の鍵となる超大型かつ高精度な「トロイダル磁場コイル」5基の製作を終え、全数をITERサイトへ出荷したと発表しています。
加えて、プラズマ中の不純物除去に不可欠な「ダイバータ」に関しても、実機大プロトタイプの製作を完了し、実機製作を進めている段階です。

ITERでの貴重な経験と知見は、日本国内で進められている核融合原型炉の開発にも活かされています。
三菱重工業は、燃料であるトリチウムを生産しエネルギーを回収する「増殖ブランケットモジュール」の概念検討など、原型炉実現に向けた設計活動を展開。
核融合エネルギーが実用化された場合、同社はこれまでの実績や技術開発を通じて、将来の市場形成において一定の役割を担うことが考えられます。

一方で、ITER計画自体の遅延リスクや原型炉開発での未踏の技術的ハードルも存在します。
三菱重工業には設計・製造技術の継承と進化、コスト競争力を見据えた継続的な技術開発が不可欠です。
AI等の新技術を導入した合理的なものづくり体制の確立も、未来のエネルギー事業成功への重要な要素となるでしょう。

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JT-60SAへの貢献で核融合の未来を拓く「木村化工機」

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木村化工機株式会社は1924年創業の老舗で、エンジニアリング、化工機、エネルギー・環境の3事業を展開しています。
長年、特にエネルギー・環境事業では国内の原子力関連施設向け装置供給や核燃料サイクル業務で実績を重ね、社会基盤を支えてきました。

近年同社は、次世代エネルギーとして期待される核融合分野でも具体的な貢献を果たしています。
日欧共同で実施されている先進プラズマ研究計画「JT-60SA」に対し、プラズマを真空断熱するためのクライオスタットの上蓋など、関連機器を製作・納入した実績があります。

JT-60SA計画が将来の核融合原型炉開発を見据えた研究を含んでおり、同社が関連機器を製作していることは、将来の核融合開発への関与の可能性を示唆する側面があると言えます。
エネルギー・環境事業で培ってきた同社の、原子力関連の経験が活かされるでしょう。
また、国産SAF(持続可能な航空燃料)製造への参画も、脱炭素化への積極的な姿勢の表れと言えます。

一方で、JT-60SA計画が取り組んでいる技術開発の実用化には、さらなる開発が必要となります。
また、国際プロジェクトの進捗、エネルギー政策の転換、高度技術開発に伴うコスト管理なども事業リスク要因です。
事業環境の変化に対応しつつ、継続的な取り組みを進めていくことが求められます。

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対向機器や容器内センサーなどの部品で実績あり「助川電気工業」

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助川電気工業は1949年設立の技術開発型企業です。
エネルギー関連と産業システムを主力とし、特にエネルギー分野では長年原子力向け製品を供給。
近年はこの技術力を次世代の核融合エネルギー開発へと展開しています。

同社は核融合エネルギー研究開発で重要な役割を担っています。
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構など国内有数の研究機関へ専門性の高い製品を供給し、技術力と信頼性で独自のポジションを確立。
原子力分野で培われた高温・高真空といった極限環境対応技術が競争優位性の源泉となっています。

また、同社の核融合分野への貢献は、日欧共同の先進プラズマ実験装置「JT-60SA」計画への参画に象徴されます。
この計画では、プラズマに面する「プラズマ対向機器」や「容器内センサー」等の機器の製作・組立てを受注しています。
これらは高温・高真空等の極限環境に耐える高度技術が不可欠で、同社の精密加工や計測技術の粋を集めたものです。

核融合エネルギーは、生活の基盤となるエネルギーとしてその実現が期待されています。
「JT-60SA」等への貢献は、同社がこの成長市場で重要な役割を担うことを示唆します。将来の商用化でもその技術力は不可欠と期待されます。
しかし原子力産業分野への依存、国の政策変更による影響、および技術的難易度の高い受注における不確実性はリスク要因となり得ます。

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ITER計画を支える超伝導技術「日本製鉄」

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日本製鉄株式会社は、1950年に設立された日本の大手総合鉄鋼メーカーです。製鉄事業を中核としつつ、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューションといった多角的な事業を展開しており、その技術力は次世代エネルギーとして注目される核融合分野にも活用されています。

同社グループは、国際熱核融合実験炉(ITER)計画において、核融合炉の重要部品である超伝導コイル用導体の製造を担っています。
この分野では、長年にわたる金属材料に関する知見や精密加工技術、大規模プロジェクトの管理能力が、その役割を支える基盤技術となっています。

核となるのは、ITERのトロイダル磁場(TF)コイル用に不可欠な高性能超伝導導体の製造技術です。
具体的には、約1,000本もの超伝導素線を高精度で束ねた撚線を、特殊な金属製保護管に収めます。
これを製造するために、薄肉ジャケットの変形を極限まで抑制する溶接技術や、レーザーを用いた微細な突起の非破壊検査技術など、世界最先端の技術を結集しています。

日本製鉄グループは、ITERプロジェクトでの超伝導コイル用導体製造を通じて、核融合分野に必要な高度な技術と知見を蓄積しています。
一方で、将来的な革新技術開発においては、長期かつ継続的な政府支援の変動や、関連制度の変更が事業環境に影響を与える可能性については留意が必要です。

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