ユニクロだけじゃない!SPAモデルを採用するアパレル銘柄4選

消費者の多様化やデジタルシフトが進む日本国内のアパレル市場において、企画から製造、販売までを統合的に行うSPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)モデルは、多くの企業が市場の変化に対応し、競争力を維持・強化していく上で重要なビジネス形態の一つと考えられています。
SPAモデルの主な特徴としては、商品企画から店頭販売までのリードタイムを短縮し、消費者のニーズに迅速に対応できる点が挙げられます。
また、中間流通コストの削減などを通じて価格競争力を高めたり、自社ブランドの世界観を統一して展開することで、独自の顧客層を獲得したりすることも可能とされています。
これにより、各社はそれぞれのブランド戦略に基づき、多様な顧客層へのアプローチを試みています。
本記事では、国内アパレル市場でSPAモデルを採用している一部の企業(4社)を取り上げ、各社の事業戦略や近年の業績動向、そして今後の事業展開の方向性などについて、公表情報や一般的な市場分析を基に紹介・考察します。
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ファーストリテイリングは、「ユニクロ」を中核ブランドとするグローバルSPA(製造小売)企業です。
同社は、商品企画から製造、物流、販売、店舗運営までを一貫して自社で管理するSPAモデルを構築しており、事業運営の効率性と市場ニーズへの柔軟な対応を目指しています。
国内市場においては、シーズンを通して提供できる定番商品と、トレンドを反映した新商品を組み合わせた商品戦略を展開し、売上および在庫管理の最適化を図っています。
また、価格戦略や顧客接点の強化を通じた購買体験の向上にも取り組んでいると報告されています。
一方、海外展開は同社の成長戦略の重要な柱の一つと位置づけられており、特に北米・欧州・東南アジアなどの地域でユニクロブランドの店舗展開を進め、売上の拡大が見られます。
グローバルSCM(サプライチェーン・マネジメント)の最適化にも注力し、効率的な運営やコスト管理を通じて、収益性の改善に努めています。
>>ファーストリテイリングについてもっと詳しく:【注目決算】ファーストリテイリング 本決算で過去最高業績 柳井氏「条件整った」
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アダストリアは、「グローバルワーク」や「ニコアンド」など約30のブランドを展開し、10〜50代の幅広い層をターゲットとする総合アパレル企業です。
同社はSPAモデルを軸に、商品企画・製造・物流・販売を自社で管理する体制を構築し、需要に応じた供給スピードとコスト効率の向上を目指しています。
同社の特徴の一つとして、多様なブランドポートフォリオによる幅広い顧客層への対応力が挙げられます。
ファミリー層、Z世代、ナチュラル志向など、ライフスタイルに合わせた商品開発を行うことで、市場やトレンドの変化に対応しようとしています。
2024年2月期には売上高2,755億円、営業利益180億円となり、前年度を上回る水準となりました。
同社は、SPAモデルによる一貫生産体制が収益性の確保に繋がったと分析しています。
さらに、自社ECサイト「.st(ドットエスティ)」の会員基盤拡大や、セブン&アイ・ホールディングスとの協業によるBtoB型事業の展開などを通じて、収益源の多様化を図っています。
また、OMO戦略(オンラインとオフラインの融合)による購買体験の向上にも取り組み、顧客エンゲージメントの強化や売上への効果を期待しています。
中長期的には、SPAモデルを基盤としたプラットフォームを構築し、社外ブランドやパートナー企業への販売支援や物流提供といった、アパレル以外の収益拡大も視野に入れた戦略を推進しています。
>>アダストリアについてもっと詳しく:営業利益44%増!「アダストリア」2019年2月期決算
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ワークマンは、元々作業服専門チェーンとして事業を開始しましたが、近年は「ワークマンプラス」や「#ワークマン女子」といった一般消費者向け業態にも展開を広げ、多様な市場での成長を目指しています。
同社はSPAモデルを基盤とし、高機能かつ比較的手頃な価格帯の商品開発を自社主導で行うことを特徴としています。
フィールドテストや専門家の知見を取り入れた共同開発などを通じて、実用性や機能性を重視した製品を提供しています。
また、素材選定から製造工程までの設計に自社が関与することで、中間コストの削減や原価管理の効率化を図っていると説明しています。
2024年3月期の売上高は、1,752億円、営業利益231億円となり、前年度から増収増益となりました。
同社によれば、新業態の展開などによる店舗売上の増加が主な要因の一つです。
プロ向け市場に加え、一般消費者へも顧客層を拡大することで、既存店売上の維持と新規出店による事業規模の拡大を両立させることを目指しています。
自社開発商品においては、デザイン性と機能性の両立を考慮したプライベートブランドの構成比を高めており、価格訴求力のある商品展開を行っていることが、一部顧客からの評価に繋がっていると考えられます。
今後の計画として、国内1,000店舗体制の実現を視野に入れた出店を進める一方、プロ向け製品の強化や女性向けラインナップの拡充など、新たな領域への展開も検討しています。
ワークマンは、統合型ビジネスモデル(製造小売業)による柔軟な商品展開や収益構造の維持・強化が、今後の事業継続において重要であるとの認識のもと、戦略を推進しています。
>>ワークマンについてもっと詳しく:ワークマン土屋哲雄専務インタビュー「第2のデータ経営で世界トップ10へ」
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ワールドは、「UNTITLED」や「OPAQUE.CLIP」など多数のアパレルブランドを有し、百貨店やショッピングモールを中心に多チャネルで事業を展開するアパレル企業です。
従来、OEM生産の比率が高かった同社ですが、近年はSPA型への移行を進め、自社による商品企画・製造・販売の一貫体制の強化を図っています。
マーチャンダイジング(MD)の内製化を進めたことで、人気商品の追加生産や在庫リスク管理における柔軟性の向上を目指しています。
2025年2月期(決算期変更後)の通期営業利益は、再上場後の期間において高い水準に達しました。
同社は、これを構造改革の成果の一つとして位置付けています。
この業績には、エムシーファッションの子会社化やライトオンへの出資を通じた事業多角化の動きも影響したと説明しています。
SPAモデルを軸に、デジタル技術の活用やBtoB領域での事業展開も進めています。
加えて、オムニチャネル戦略を推進し、店舗とECサイト間の連携を強化することで、在庫の最適化や販売効率の向上を追求しています。
プラットフォーム事業においては、他社ブランドの生産受託や物流支援といった、SPA事業で培ったノウハウを外部に提供する形で、新たな収益機会の確保に取り組んでいます。