ナイキ、新CEOヒル氏が挑む「原点回帰」 —— 割引乱発の反動と復活への鍵
Nike, Inc.

2025年3月20日、ナイキの2025年度第3四半期決算(12〜2月期)が発表された。売上高は前年同期比9%減の113億ドル、1株当たり利益も0.54ドルと前年から30%の減益だった​。世界最大のスポーツ用品ブランドである同社は、近年の在庫過多に伴う大規模な値引き販売に直面し、ブランド価値の低下と収益悪化に悩んでいる。

この立て直しを託されたのが、昨年10月に就任したエリオット・ヒルCEOだ。ヒル氏は就任後初の決算説明会で、自社の「スポーツDNA」を呼び覚ますブランド再定義と、販路戦略の見直しによる業績回復策を示した。ナイキはいま、市場シェア拡大と利益率維持のジレンマにどう挑もうとしているのか。本稿では、同社の現状と新戦略を5つの視点から分析する。

割引乱発が招いたブランド価値の低下

ここ数年、ナイキは積み上がった在庫をさばくために大量の値引き販売(プロモーション)を乱発してきた。スポーツ小売大手のフットロッカーは今年3月の決算発表で、ナイキによる過度な値引き販売の影響で自社の利益率が低下する見通しだと明かしている。実際、ナイキ製品はフットロッカーの売上構成の6割以上を占めるため、ナイキが在庫一掃のために仕掛けた割引攻勢の打撃が小売現場にも及んでいた。

結果として、ナイキの粗利益率は今年度第3四半期に41.5%まで低下し、その要因の一つが大幅な値引き販売であったことを会社側も認めている。かつて定価販売が常識だったエアジョーダン1やエアフォース1、ダンクといった定番スニーカーさえも処分価格で並ぶ状況は、ブランドのプレミアムイメージに陰りを落としている。

新CEOのヒル氏自身、「当社はプロモーション(値引き)に頼りすぎており、値下げの頻度が高すぎる」と指摘する。​就任直後の決算説明会で「今年度当初時点では、自社のデジタル販売における売上の約半分が値引き品によるものだった」と明かし、その水準が「ブランドに悪影響を及ぼすだけでなく、市場全体やパートナー企業の収益性も損なっている」と率直に述べている​。

ナイキは長年培ってきたブランド価値=「常に最高の製品を提供するスポーツブランド」というイメージによって、高い利益率を維持してきた。だが頻繁なセールに慣れた消費者は定価商品を買い控え、ブランドの希少性や憧れも薄れてしまう。実際、ヒル氏は「プレミアムブランドであるということは、すなわち定価販売である」と強調しており、値引きに依存した販売モデルからの脱却が急務だと捉えている。

新CEOヒル氏が打ち出すブランド再定義

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