【保存版】サイバーエージェントによる新規事業開拓の歴史
サイバーエージェント

前回、「楽天による買収の歴史」という記事を書いてかなり評判がよかったので、似たような形で今回はサイバーエージェントについてまとめてみたいと思います。

ただ、印象としてサイバーエージェントは買収というよりも自社で新規事業をガンガン広げていっているイメージなので、タイトルのようにしました。

全体像

例によってクソ長いので、先に全体を表でまとめておきます。

1998/3 創業
1998/8 初の自社製品「サイバークリック」 クリック保証型のバナー広告システム
2000/3 株式公開 1999年は年商4億5000万円
2003/9 シーエー・キャピタル(サイバーエージェントFX)設立 FX事業に参入
2004/5 育成制度「CAJJプログラム」を開始 事業プランコンテスト「ジギョつく」も
2004/9 「アメーバブログ(現Ameba)」を開始 良質なコンテンツを輩出するユーザーを現金還元という形で支援
2007/7 「マイクロアド」設立、アドネットワーク事業に参入
2008/2 米国子会社を設立
2009/2 仮想空間アバターサービス「アメーバピグ」を開始
2009/4 スマートフォン広告に特化した子会社「CyberZ」設立 ゲーム事業にも
2010/7 子会社「アプリボット」によりスマホゲームに参入
2011/5 ゲーム子会社「Cygames」設立 当初はDeNAの「Mobage」向け
2012/4 Cygamesの「Rage of Bahamut」が全米No.1に
2014/4 「CA18」執行役員制度開始 女性活用推進制度「macalonパッケージ」、次世代リーダー育成制度「CA36」も
2015/5 定額制音楽配信サービス「AWA」を開始 エイベックスと合弁
CyberBull、AbemaTVなどの動画関連子会社を設立
2016/3 インターネットテレビ局「AbemaTV」を開始 11月には1,000万DLを突破

スマホだと少し見にくいかな。。

創業(1998年3月18日)

サイバーエージェントのすごいところの一つは、会社ホームページがめちゃめちゃ充実しているところで、必要な情報はだいたいここから手に入りました。

社長の藤田さんの創業当時の日記も見ることができます。

今日から、日記を書きます。

サイバーエージェントは1998年3月18日に設立されました。

上の日記は7月25日なので、創業からちょうど4ヶ月くらいが経ったころです。

日記では、「この間にはびっくりするほどいろいろなことが起きています。 4 個しかなかった机が10個に増えて、新聞記者が取材に来て、大企業との提携が決まり、新規事業を次々に立ち上げて、フロムAに広告を出したら100人も面接に来て、アルバイトを採用して、リストラし、新卒会社説明会を開催して90名の学生を集め」たと興奮気味に書いてあります。

最初はインターネット企業向けの営業代行会社としてスタートしたというのは有名ですね。

初の自社製品「サイバークリック」(1998年8月)

創業から半年も経たないころから社長の藤田氏は「インターネットのマルチベンダーのままでは、将来どうなるか危うい」と考えており、強い自社製品・サービスを確立せねばと毎日、社内で新規事業コンテストを行なっていたそうです。

1週間で110時間働くと決め、自社開発商品を思いつく

実は、新規事業開拓の文化はこの頃に培われたのかもしれません。

そんな中、生まれたのがクリック保証型のバナー広告システム「サイバークリック」。

実際にはライブドアの前身であるオン・ザ・エッヂが開発を手がけたようで、サイバーエージェントが企画し、オン・ザ・エッヂが開発し、サイバーエージェントが売る、というベンチャー企業としてお互いを補完する良い関係にあったようです。

社長の日記には長谷川くんがほぼ一人で開発したとありますが。。)

初年度の売上高は2000万円だったものの、翌1999年には4億5000万円に。

そして、2000年3月には早くも株式を公開します。

藤田社長はその時に本も出していたようです。

2001年4〜6月の第3四半期には黒字化も達成。四半期売上はすでに15億円を超えていたそうです。

シーエー・キャピタルを設立(2003年9月1日)

気づいたんですが、買収と違ってサービスや子会社の開始は必ずニュースになるわけではないので、情報を集めるのが大変ですね。

2003年9月に、その後の「サイバーエージェントFX」につながる子会社としてシーエー・キャピタルが設立されました。

今から考えるとかなり早いタイミングですね。アメブロより先だったのか。

シーエー・キャピタルとして書籍も販売しています。

これを機にFX(外国為替証拠金取引)事業に参入。サイバーエージェントFX自体は2013年にヤフーに事業譲渡されています。

株式会社サイバーエージェントFXの株式譲渡に関するお知らせ

2012年の時点で売上高85億円、営業利益40億円もあったようで、これだけ収益性の高い事業を手放すのはなかなかすごい決断に思えます。

時間を戻します。

育成制度「CAJJプログラム」を開始(2004年5月24日)

サイバーエージェントは、ここまでの間にグループ制⇒カンパニー制⇒プロジェクト制と、成長に合わせて組織を変えてきたそうです。

そして、

・大型の買収よりも、社内での事業の立ち上げと拡大を重視

・新規事業は小さく生んで大きく育てる

・人材の採用、育成、社内の活性化を強化

という同社の方針を踏まえて作ったのがCAJJプログラム(サイバーエージェント事業& 人材育成プログラム)という社内制度。

その中では、組織のレベルを3つのレベルに分けます。

J3(グループ)⇒J2(プロジェクト)⇒J1(カンパニー)

まるでサッカーのJリーグみたいですが、この中で伸びる人材や事業を発掘し、育てていくという体制ができ始めたようです。

2004年6月30日には半年に一度の事業プランコンテスト「ジギョつく」も開始。

事業プランの提出からスタート決定まで10日間の電光石火で行い、決まると速やかにJ3から事業をスタートする、という内容。

選考ポイントは「人材」と「事業」で比重は6:4。

サイバーエージェントの新規事業開拓の文化は創業期からあったようですが、このころからそれが明文化され、社内制度化されたという感じでしょうか。

藤田氏が買収案件を社内に持ち込むと「社長、そんな事業に何億円も払うんなら、うちで作れますよ」 と言われたそうです。

「アメーバブログ(現Ameba)」を開始(2004年9月15日)

ここにきてようやく、現在もなじみのあるサービスが登場します。

現金還元型BLOG サービス「アメーバブログ」を開始

アメブロは「良質なコンテンツを輩出するユーザーを現金還元という形で支援する新しいブログサービス」としてスタートしたんですね。

オープニングキャンペーンとして、年度末までの総合人気ランキング1位のブロガーに対して現金100 万円を送るキャンペーンも実施していたようです。

気に入ったブログの読者になれる「読者機能」も公開当初からあったみたい。

その後「Ameba」に名前をかえ、2006年3月には会員数が100万人を突破。

同年4月にはサイバーエージェント・ベンチャーズも設立し、ベンチャー投資を開始したほか、5月にはエンジニアの中途採用も開始します。

マイクロアド設立、アドネットワーク事業に参入(2007年7月2日)

2007年にはアドネットワーク事業を展開するマイクロアドを設立。

自分の記憶では、昔はクリック報酬型広告を展開していた気がします(うろ覚え)。

今のウェブサイトはめっちゃかっこよくなってますね。

米国子会社を設立(2008年2月)

2008年にはアメリカのサンフランシスコに米国使者として「CyberAgent America, Inc.」を設立。

サイバーエージェント、米国子会社CyberAgent America設立

2008年はこのほか、新卒エンジニア職第1期生が入社したり、役員交代制度「CA8」を開始したりと、大きな組織的変化もあったようです。

(現在のCA8)

仮想空間アバターサービス「アメーバピグ」を開始(2009年2月)

2009年には、アバターを使ってユーザー同士でコニュミケーションができる「アメーバピグ」も開始。

アバターはそれぞれ自分の部屋を一つ持ち、部屋に家具や壁紙を配置したり、窓や床のデザインを変更したりして楽しめることができます。


同年の4月にはスマートフォン広告に特化した子会社「CyberZ」を設立したほか、ゲーム事業にも参入。

9月には「Ameba」が四半期黒字化を達成し、2010年には「Ameba」会員数が1,000万人を突破します。

子会社「Cygames」の設立とゲーム事業の拡大(2011年)

2010年の7月、子会社「アプリボット」を設立しスマートフォン向けネイティブゲーム事業に参入します。

この時点ではまだガラケーのソーシャルゲームの方がはるかに市場が大きい頃。


そして、2011年に現在の稼ぎ頭の一つである「Cygames」が設立。DeNAの「Mobage」向けにソーシャルゲーム開発を積極的に拡大します。

この年にサイバーエージェントは売上高1000億円を越え、「Ameba」会員数も2000万人を突破したそうです。

スマホゲーム「Rage of Bahamut」が全米No.1(2012年)

業界の中では比較的、後になってから参入したゲーム事業ですが、ここからものすごい成長を見せます。

2012年の4月には子会社のCygamesが開発した「神撃のバハムート(Rage of Bahamut)」が全米でナンバーワンを獲得。

全米が神撃した! 『神撃のバハムート』英語版がGoogle Playの売上ランキングで米国1位に

また、この頃には全社員に占める技術者の割合が4割を突破。2008年に新卒エンジニアを採用し始めてわずか4年です。

小学生向けプログラミング事業に参入(2013年)

2013年には子会社CA Tech Kidsを設立し、小学生向けプログラミング事業に参入。

「CA18」執行役員制度開始(2014年)

2008年に役員交代制度「CA8」を開始していましたが、2014年にはこれをさらに進めた執行役員制度「CA18」を開始。

このほか、女性活用推進制度「macalonパッケージ」も導入しました。

さらに同年9月には東証一部への市場変更も果たしたほか、次世代リーダー育成制度「CA36」もスタートしています。

定額制音楽配信サービス「AWA」を開始(2015年)

ここら辺からだいぶ記憶に新しいですね。

2015年にはエイベックスグループとの合弁により、定額制音楽配信サービス「AWA」をスタート。

音楽配信サービスにおける新会社「AWA株式会社」設立に関するお知らせ

(ミスチルの櫻井さん風の男性が写っています)

「AWA」のアプリが出はじめた時に自分も触りましたが、なんとも言えないワクワク感を感じたことが印象に残っています。

また、実はこの頃にはすでにCyberBull、AbemaTVなどの動画関連子会社を設立し、積極的に「動画」領域への投資をスタートしています。

動画広告に特化した「オンラインビデオ総研」というものも設立しています。

サイバーエージェント、動画広告に特化したオンラインビデオ総研を設立。第一弾として、企業の動画広告の利用状況に関する調査を実施(2015年10月16日)

インターネットテレビ局「AbemaTV」を開始(2016年)

そして2016年、インターネットが始まって以来誰もが欲しかったであろう、ネットで見られるテレビ局「AbemaTV」がスタートします。

4月に本開局してから11月には1,000万ダウンロードを突破。同時期にAWAも1000万ダウンロードを突破したようです。


いかがでしたでしょうか。

サイバーエージェントは「広告事業」「メディア事業」「ゲーム事業」の三本柱からなる会社ですが、こうやって時系列でさかのぼってみると、その過程では本当にいろんなことがあったんだろうなあと思わされます。

あと、「新規投資家のみなさまへ」とかいうページもあって情報が充実しているし、本当に株主の方を向いたいい会社だなと思いました。