プライベートジェットの予約・運行サービスを手がける「Wheels Up」が近く、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じてニューヨーク証券取引所に上場する。評価額は2019年時点から倍増し、20億ドル以上となる見込みだ。
掲げる目標は「空のAirBnb」になること。プライベートジェットに乗りたい人と、稼働せずに待機しているだけの機体を繋ぐプラットフォームを展開する。
関連企業の買収も寄与し、2020年度の売上高は前年比80%増の7億ドル。あくまで計画だが、2025年には21億ドルまで成長するという。
コロナ禍で航空各社は軒並み大打撃を受ける中、密を避けられるプライベートジェットの需要はむしろ高まっている。この業界の代表格「Wheels Up」の創業ストーリーやビジネスモデル、戦略を確認していこう。
創業者のケニー・ディクター(Kenny Dichter)は1968年生まれ。プライベートジェットに乗る贅沢な暮らしとは、かけ離れた子供時代を送った。
1970年代から80年代にかけ、ニューヨーク州のロングアイランドで過ごす。家計の足しにするため、6年生の頃には新聞配達のバイトを始めた。平日の午後と日曜日、自転車に乗って近所の家へ配って回る。
学業は優秀で、ウィスコンシン大学マディソン校に進学して社会学を学んだ。学費を工面するために食堂で皿洗いのバイトするかたわら、Tシャツ販売ビジネスも手がけるなど、早くからその才覚を示した。
「飛行機」の世界に身を投じるとを決めたのは、1998年のこと。サウスカロライナ州のリゾート地「キアワ島」への旅行で、友人が予約したプライベートジェットに乗ったときだ。
ディクターは、その快適で自由な空間に感動。「初めてのプライベートジェットだったが、魅力に取り憑かれた」と振り返る。「この分野でビジネスをしなくては」。そう考えるようになった。
2001年、早速1つ目の航空サービス会社「Marquis Jet」を立ち上げた。