決算説明で出てきたソフトバンクビジョンファンド投資先ベンチャー14社の事業内容をおさらい
ソフトバンクグループ

11月5日、ソフトバンクグループの2019年3月期2Q決算が発表され、Stockclipでもまとめ記事を出しました。

その中で存在感を強めているのはやはり「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の存在です。

投資先はすでに67社に達し、上半期の営業利益の半分近くを稼ぎ出すまでに存在感を強めています。


人類史上かつてないほどクレイジーな投資戦略を展開しているソフトバンク・ビジョン・ファンドですが、投資先企業がどれも恐ろしいほど成長しているのも事実。

そこで今回は、先日の決算発表で孫正義氏が紹介した投資先ベンチャー企業10社あまりについて、その事業内容をおさらいしていきたいと思います。


① イケイケコワーキングスペース「WeWork」

WeWorkは2011年にニューヨークで創業したベンチャー企業で、「スタートアップ」と言われる新興企業にオフィススペースをレンタルしています。

世界のメンバー数は27万にまで成長し、そのうち25%は「エンタープライズ」、すなわち規模の大きな会社です。

展開地域は23カ国77都市にのぼり、287ものオフィス拠点を展開しています。

ソフトバンクとの合弁でスタートした「WeWork Japan」のメンバー数も6,000まで拡大し、イケイケ系オフィスとしてその存在感を強めています。


② 韓国の爆速ショッピングサイト「Coupang」

Coupang(クーパン)は韓国のオンライン通販サイト大手。

2010年に創業した「次世代のeコマース」企業として注目を集めています。

アプリダウンロード数は2,500万と、韓国の人口(5,147万人)を考えると非常に普及していることが分かります。

トラックやドライバー(Coupang Menと呼ばれる)を含めた独自の物流ネットワークを構築しており、即日配送を大きな強みとしています。

売上は42億ドルと、こちらも急速に成長しています。


③ インドネシア最大のEコマース「tokopedia」

tokopediaは、インドネシアのオンラインマーケットプレイスです。

個人から企業まであらゆる出品者が参加することができ、インドネシアで驚異的な成長を続けています。

取扱高(GMV)の推移をみると、なんだかものスゴいことになっています。

2018年9月期のGMVは63億ドル(7,136億円)くらいでしょうか。メルカリの2018年6月期の年間GMVが3,704億円なので、メルカリより2倍近く規模が大きいことになります。


④ インドの決済サービス「paytm」

paytm」はインドの決済サービスです。

決済サービスでありながら、映画や航空券、イベントの予約まで行うことが可能。

取引高は2019年3月期の前半だけで400億ドルに達しているようで、年間9兆円ペースということになります。

⑤ 血液検査からがん細胞を検知する「Guardant Health」

Guardant Health」はヘルスケア系のスタートアップで、人工知能を活用した血液検査サービスです。

創業者のHelmy Eltoukhy氏はスタンフォード大の研究者でした。

従来の検査ではがん細胞を実際に取り出して調べる方法がとられますが、Guardant Healthは血液検査でより安価かつ迅速に生体検査を行うことができます。

アメリカのがんセンターではすでに27施設全てで導入されていて、Guardant Healthは2018年10月に株式上場も果たしています。

⑥ 売りたい不動産を24時間で買い取ってくれる「Opendoor」

Opendoorは2013年に創業されたアメリカの不動産テック企業。

自分の持ち家を売りたくなったら、条件に合った買い手が現れるまで待たなくてはならないのが通常です。売却が完了するまで何ヶ月もかかってしまう。

Opendoorは「不動産リセールプラットフォーム」として、売りたい物件を即座に査定して買い取ってくれます。

実際に売ることが決まったら、リスティングや買い手への内見などの作業をOpendoorがやってくれるため、売り手の手間を大きく省くことができます。

取扱高は年換算で20億ドルを超える規模。

Opendoorはサービス手数料として6.2%を受け取るそうなので、売上は1.24億ドルということになります。

普通のやり方だと、不動産業者だけでも6%の手数料を払う必要があるため、売り手にとってはOpendoorの方が合理的です。

⑦ 不動産営業をテクノロジーと組み合わせる「Compass」

Compass」も同じく不動産系テクノロジーベンチャーです。

各地の不動産エージェントを最新テクノロジーと組み合わせることで、最高の部屋探し体験を提供するとのこと。

取扱高はOpendoorより大きく、上のグラフを見た限りでは年間300億ドル(3.4兆円)近い水準に達しています。


⑧ 動的なスマートガラスを開発する「View」

Viewは2006年に創業した「窓の再発明」をテーマにするベンチャー企業。

普通の部屋なら、窓の外が眩しくなったらブラインドやカーテンを使ってそれを遮りますが、Viewは窓ガラス自体が日向の状態に応じてサングラス状態になります。

孫正義氏いわく、Viewの窓ガラスを使うことでエアコン代を削減することができるとのこと。

ヒューレット・パッカードやFedEx、WeWork、ウェルズファーゴ、デルタ航空、JPモルガンなどそうそうたる企業がViewのスマートガラスを利用。

⑨ 建設プロジェクトを大幅に効率化する「Katerra」

Katerra」は、建設プロジェクトのあり方を変えようとしているベンチャー企業。2015年に創業。

設計から物資調達、製造、建設までに至るプロセスをカバーし、建設プロジェクトに対してサービスを行なっています。

従来の建設手法に比べて納期やコストが4割から半分になるとのこと。

売上はすでに10億ドル規模。


⑩ GMV合計が10兆円規模に拡大した「ライドシェア」

続いてライドシェアです。

ここでは4社が一気に取り上げられています。合計の取扱高(1年換算)は10兆円にものぼるそうです。

念のためおさらいしておくと、Uber(アメリカ)は2009年に創業。

DiDi(中国)は2015年、Grab(シンガポール)は2012年、Ola(インド)は2010年にそれぞれ設立されています。


11. 1.7億人が使うフードデリバリー「ele.me」

最後に触れられているのが、アリババの子会社でもある「ele.me」です。

こちらはまだ投資しておらず、契約の最終調整段階だそうです。

ele.meは中国最大級のオンデマンド食料配達プラットフォーム。

アクティブユーザー数は年間1.7億人にのぼり、350万の飲食店が登録しています。

ドライバー数は月間67万人。

ele.meの大きな強みはアリババエコシステムの恩恵を受けられること。

中国におけるオンデマンドフードデリバリー市場はものすごい勢いで立ち上がっており、2020年には14兆円に達すると予想されています。

非常に興味深いなと思ったのが、世界全体のGDPのうち、12%が物流費用であるという事実です。

世界で生み出される付加価値の1割以上が「物流」に割かれているというわけで、そのポテンシャルも非常に大きいと考えているそうです。