昨夜、アリババグループの3Q決算が発表されました。
まずはハイライトから。
四半期収益は前年から56%増加し、830億元(127億ドル)に。
そのうち、メインの収益であるコア・コマース売上は57%の増加で、732億元(112億ドル)に。
クラウド事業は前年から2倍以上の成長を続け、36億元(5.5億ドル)の売上に。
中国小売(China commerce retail)の成長は47%となっている一方、海外小売が前年比93%の成長を見せ、7億2700万ドルに。
中国小売の売上92億ドルのうち、60億ドル近くが顧客管理(Customer management)、25億ドルは手数料(Commission)となっています。
前者はアリババに出店する事業者向けの広告収益が多くを占めています。
四半期のフリーキャッシュフローは71億ドルに。年間280億ドルペース。ほとんどマイクロソフト並みの規模です。
アリババのコマース事業の成長を牽引しているのが、顧客一人当たりの収益の伸びです。
年に一回以上買い物したユーザーあたりの年間売上高は300元(5200円くらい)と、前年同期から20%ほど増加しています。
モバイルの月間アクティブユーザー(MAU)あたりのモバイル売上も増加しています。
そしてもちろん、母数も増大しています。
年間の買い物者数は5億1500万人に。モバイルMAUは5億8000万人に達しています。
母数の拡大と、単価の上昇という二つがコンボとなって「ありえない」成長をもたらしています。
メイン事業についての説明を読んでみます。
CtoCプラットフォームのTaobaoは機械学習技術への投資を続け、ユーザーに最適なコンテンツを届けられるようにしているとのこと。
アプリのエンゲージメント強化によってモバイルMAUは5億8000万人に、年間購入者数は5億1500万人に増加。先ほどの数字と同じです。
BtoCプラットフォーム「Tmall」は、前年から43%のGMV成長を記録。
今後もジバンシィやジョルジオ・アルマーニなど、世界のトップブランドの販売を続けていくとのこと。
2017年11月のグローバルショッピングフェスティバルでは、マーケットプレイス上でAlipayを通じて行われる取引額が39%増加し、259億ドルに。
「New Retail」と言われる領域にも投資を続けています。
生鮮食品スーパー「Hema」は上海、北京、寧波、蘇州などに新店舗を展開し、2017年末時点で25店舗に拡大。
2017年11月には中国で最大売上を誇理、440店舗を展開するスーパー(ハイパー)マーケットチェーン「Sun Art Group」と戦略的提携を結びました。
海外事業は未来に向けた投資を主に行なっており、東南アジアの「Lazada」や海外マーケットプレイス「AliExpress」の成長により前年から93%の成長。
東南アジアや越境ECはまだ戦いの初期フェーズに過ぎないとのこと。
2017年に経営権を握った物流ネットワーク「Cainiao Network」は、11月のグローバルショッピングフェスティバルに置いて8億1200万件の注文をさばいたとのこと。
同サービスでは、配送データを構造化されたフォーマットに落とし込む電子配送ラベルシステムを採用。そのおかげで、多くの事業者や物流業者が同ネットワークを採用しているとのこと。
クラウド事業は前述の通り、前年から2倍に成長。
顧客の中には中国のヘルス・ビューティ小売企業の「Watsons China」や自動車メーカー「Geely」、そして北京首都国際空港もAlibabaのクラウドサービスを利用しているとのこと。
デジタルメディアとエンタメ事業では、動画サービスの「Youku」の平均デイリー視聴者が前年の2倍に。オリジナルドラマシリーズのヒットが増加要因とのこと。
また、この四半期には「Day and Night」をNetflixで配信する契約を結んだとのこと。中国で作られたオリジナルコンテンツが世界で広く配信されるのはこれが初めてだと誇っています。
新規事業では、2017年6月に公式発売されたAI付きのボイスアシスタント「Tmall Genie」の販売台数が100万台を超えたとのこと。
1月には自社の研究機関「iDST」にて、自然言語処理においてスタンフォードの読解力テストよりも高得点のディープラーニングのニューラルネットワークを開発。機械が人間を上回った事例としては初めてとのこと。
2014年に同意したAnt Financialとの関係性をさらに強めるべく、同社の株式をさらに33%獲得するとのこと。
AlipayはTaobaoのためのサードパーティ決済サービスとしてスタートしたそうですが、完全子会社というわけではなかったんですね。ここら辺の関係性はまた改めて整理したいところ。
2017年12月、Alipay Walletを1日に使うユーザーは前年から2倍に増加。
財政状態もチェックしておきます。
総資産1093億ドルのうち、現金同等物は326億ドル。買収によるのれんが250億ドル、投資株式が199億ドルあります。
負債と自己資本です。
無担保社債が136億ドル、短期借入が9.9億ドルあります。
利益剰余金は253億ドル、資本剰余金が276億ドルほど。
アリババグループの株式時価総額は現時点で4923億ドル。ネット有利子負債は-193億ドルなので、EV(企業価値)は4730億ドルと計算できます。
ここで、アリババの四半期キャッシュフローが71億ドルで、年間284億ドルペースだったことを思い出してみます。
EV4730億ドルは284億ドルの16.6倍ですから、アリババを丸ごと買ったとしたら17年で元が取れることになります。
年間売上50%成長の高成長企業とは思えないほど、一般的には割安です。
時価総額が世界トップ10に入るレベルになると、無意識に「これ以上は上がらないだろ...」という抑制が働くのでしょうか?
割安だから株価が上がり続けるとは限りませんが、アリババの強さはしばらく続きそうです。