中国のECプラットフォームの巨人、アリババはやはり現代で最も注目すべき企業の一つだと思います。
今回は、そのアリババが過去にどんな会社を買収してきたかを調べてみます。
crunchbaseやアリババの過去のプレスリリースから、以下の14社が見つかりました。
発表日 | 買収社名 | 買収先の概要(ジャンル、事業領域など) |
2010年6月 | Vendio | EC販売管理のSaaS |
2013年4月 | Umeng | モバイルアプリの分析 |
2013年9月 | Kanbox | ストレージのネットワーク同期ツール |
2014年4月 | AutoNavi | オンラインマップ |
2014年6月 | UCWeb | モバイルブラウザ |
2014年9月 | ChinaVision | 中国の映画・テレビ制作会社 |
2015年1月 | AdChina | 広告プラットフォーム |
2015年4月 | Yueke Software | チケット予約と映画館管理 |
2015年10月 | Youku Tudou | 動画共有サイト |
2015年12月 | South China Morning Post | 香港の英字新聞 |
2016年3月 | AGTech Holdings | スポーツレジャーとスポーツくじ |
2016年4月 | Lazada | 東南アジアEC |
2016年7月 | Wandoujia | 中国のアンドロイドアプリストア |
2017年3月 | Damai.cn | EC統合プラットフォーム&エンタメコミュニティ |
それでは、一つずつ見ていきましょう。
参考:Alibaba makes first US acquisition
Vendioは米国をベースとするEコマース関連企業で、アリババが行った最初の米国における買収でした。
Vendioを使うことで、EC事業者がeBay、Amazon、Facebookなど、複数のプラットフォームで商品を出品することができます。
この買収の目的は「米国の企業がより多くアリババのプラットフォームに参加するように」というものだったようです。
しかし、2015年にはVendioをOpenSkyに売却しています。
Alibaba Sells Off 11 Main Along With Auctiva and Vendio
OpenSkyはブロガーコマースと言われるジャンルで事業を展開しており、アリババはこの売却と引き換えにOpenSky株式の37.6%を手に入れています。
参考:Umeng, The “Flurry of China”, Confirms Its Acquisition By Alibaba
Umengは中国のアプリ分析プラットフォームです。
2013年当時の時点で中国において18万ものアプリ利用を5.9億ものデバイスでデータを集めていたとのこと。
記事では中国版「Flurry」とありますが、Flurryはヤフーに買収されたアプリ分析会社。
参考:Alibaba Group Acquires Kanbox, A Personal Cloud Storage Service
Kanboxは中国の個人向けクラウドストレージサービスで、「中国版ドロップボックス」として知られていたようです。
当時、Kanboxは1500万人ものユーザーを有しており、そのうち20%ほどがモバイルを通じて利用していたとのこと。
この買収により、アリババはクラウド・コンピューティング事業における展開を加速。Kanbox自体は2015年にクローズしています。
AutoNaviは北京に本拠をおく地図およびナビゲーションサービスを展開する会社。
2013年時点で無料アプリのユーザーは1億1600万人、MAU(月間アクティブユーザー)は5600万人に達していたとのことです。
アリババ側の意図としては「ロケーションベースのコマースにつなげたいのでは?」という推測ができます。
参考:Alibaba Group Completes Full Acquisition and Integration of UCWeb
UCWebは中国最大のモバイルブラウザ企業でしたが、これを2014年に買収しています。
アリババは2009年と2013年にUCWebに出資しており、モバイルを極めて重視するアリババの事業展開をさらに進めるために買収に至ったと思われます。
この時点でUCWebには3000人もの社員がいたとのことで、かなり大規模ですね。金額的も公式には未発表であるものの、47億ドルと言われています。
UCWebは2004年に設立され、メイン商品である「UCブラウザ」は四半期のアクティブユーザ数が5億人もおり、中国国内のシェアは65.9%に達していたとのことです。
2014年9月 ChinaVision
参考:Alibaba to Pay $804 Million for Control of ChinaVision
2014年には香港の巨大メディアグループであるChinaVisionを8億ドルかけて買収しています。
ChinaVisionにはテンセントも大株主として入っていたことで話題になりました。
中国語のテレビ番組や、映画、雑誌やモバイルメディアなどを展開していましたが、現在はAlibaba Picturesとして事業を展開しています。
参考:Alibaba acquires China’s biggest adtech company, AdChina
AdChinaは中国最大のデジタル広告テクノロジー・プラットフォームでした。
これは同社が有していたテクノロジーを目的とした買収だったようで、AdChinaのWEBサイトはクローズしています。
アリババの収益の大部分はマーケットプレイス上でのマーケティング・サービスからきているため、同社の買収はかなり納得いく部分があります。
参考:Alibaba Pictures Buys Yueke Software For CNY830 Million
これはアリババというか、Alibaba Picturesとしての買収ですね。
映画産業のためのオンライン・ソリューションを提供していたYueke Softwareを買収しています。
買収額である8.3億CNYはだいたい160億円ほどということになります。
参考:Alibaba Group Announces Non-Binding Proposal to Acquire All Outstanding Shares of Youku Tudou
これはビッグな買収ですね。アリババは2015年に中国の動画共有サイト「Youku」を運営するYouku Tudouを買収しています。
買収額は35億ドルとのこと。現在ではアリババのエンターテイメント事業の柱の一つとなっています。
参考:Alibaba Group Acquires South China Morning Post
2015年末には香港の英字新聞である South China Morning Post (SCMP)を買収。
買収の目的は「SCMPが築いたアセットと編集能力を、アリババのデジタル分野における競争力と融合すること」としています。
参考:Alibaba Buys AGTech Holdings For $308M To Boost Lottery Business
2016年にはオンラインスポーツくじを展開するAGTechを3億ドルで買収。
背景として、2015年にアリババのオンラインスポーツくじ事業が中国政府によってストップさせられたことがありました。
中国においてオンラインスポーツくじは急速に成長している市場の一つで、アリババとしては会社を買収してでも参入したかったのだと思われます。
参考:Alibaba Acquires Controlling Stake in E-commerce Platform Lazada
Lazadaは2012年に創業した東南アジアでトップを走るEコマース・プラットフォームです。
アリババはLazadaに対して5億ドルの投資も行なっていたため、合計で10億ドルを費やした買収となりました。
Lazadaが事業を展開する地域はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムで、それらの人口を合計すると5.6億人、インターネット人口の推計は2億人になります。
アリババは将来における事業のグローバル化を見据え、成長著しい東南アジア市場を押さえておきたかったのだと思われます。
参考:Alibaba snaps up Chinese Android app store Wandoujia
アリババは、中国のAndroidアプリストアを展開する「Wandoujia」を2億ドルで買収しています。
背景としてはアリババのモバイル重視があるわけですが、この3年前に百度が、同分野でトップを走っていた91 Wirelessを19億ドルとはるかに高い金額で買収しています。
Wandoujiaはかつてはソフトバンクなどの投資により10億ドルの評価額が付いていますが、この頃には中国で5番目のアプリストアとしての地位に甘んじており、市場シェアでは6%に過ぎなかったようです。
参考:Alibaba buys out online ticketing platform Damai
今年の3月には中国のオンラインチケット予約サイト「Damai.cn」を買収しています。しまじろうがいますね。
買収の目的は、アリババの注力領域の一つであるエンターテイメント分野をさらに成長させるため、とのこと。
アリババはDamaiにも2014年に投資しており、投資して育てて買収する、という事例がかなり多くある印象です。